忘れられないMAスタジオ時代(3)最終章

さて
連日のように会社に泊まり込み音響機材を勉強したわけですが
スグに悪口や評判が広がる会社だったので私が連日会社に泊まり込んで頑張っている話も間もなく社内に広まった。しかし良い様に解釈はしてくれなかった、連日泊まり込んで毎日同じ服で朝は死にそうな顔で仕事をしている。もう駄目じゃんアイツ。。

またも社長に呼ばれる
『お前は体力的に向いていないのでは?そんな顔では代理店の方に失礼だ』
ま~よくも表面ばかり見てこれほど頑張っている人間を評価してくれない会社も珍しい。
嫌な先輩の1人にこう言われた事もあった
『結婚したり遊びに行ったり人並みな生活がしたかったらこの仕事辞めた方が良いぜ?』
とてもじゃないが頑張っている人間にかける言葉ではない。
しかし当時、何も知らなかった私は本当にそうだと思った。

しかし、しかしだ
それはその会社しか知らないからそういう結論しか頭にないのである。
私は何を言われようが無視して自分だけのために頑張った。
連日連夜機材の説明書を片手に使い方を学んだ。
先輩がスタジオから居なくなった後にイジれる機材。
静まり返った深夜のスタジオは昼間の慌ただしさのかけらもなく、独特の雰囲気だ。

すると一部の人間はしっかり評価してくれて色々な仕事を任かせてくれる様になった。
ヘマもやったが新人の中では一番出来ると誰かが言ってくれた。その言葉を待っていた。
周りの評判が少し良くなったところで、いよいよ私が社長に話がありますと打ち合わせ室に呼んだ。

社長は言った『最近頑張ってるそうだな!その息で頑張れ!』
ようやくこの時が来たのだ!私は言葉を用意していたかの様に言った
『頑張っている人間を評価してくれない会社にはいれません。いい年して見習いをこれ以上続けろと?
そんな事あり得ないでしょう。年下の同期に対しても十分恥をさらしましたし、私もいい年なのだから
何時までも研修生と書いたバッジなんかしていられないので流石に他の職場を探さないと。
私のことを評価してくれている方に誘われているスタジオがあります。
以前ここで、あいつは社交性がないからこの職場に向いていないと言われた事がありますが、私を誘ってくれているスタジオの方は私の社交的な部分を評価していただいています。
人の良い部分を見い出せない、評価できない、生かせない、逆に欠点にしてしまう会社にはとてもいたくありません。
自分を評価してくれる会社に行くか、努力してもまったく評価してくれない会社か、社長が私だったらどっちに行きますか?』
社長は少し焦った様に言い返した
『待て待て、辞めるな!私は外回りの営業ばかりだから会社内で誰が仕事が出来るだとか誰と誰が仲が良くてとかいう人間関係も全く把握していない。人伝えで耳に入る事でしか知らない。誰がいじめてくるとか嫌がらせしてくるとかあったら教えてくれ』

『そんな事を社長に言ってまでここに居るつもりはありませんし、何も出来ないまま辞めるのは完全に自分の負けだと思ったので機材覚えて頑張って人に評価されてから辞めようと決めてたんです。社長に辞めるなと言われた時点で満足です。私は社長がとても好きで尊敬しています。しかしこうはなりたくない先輩が多すぎます。。ただそれだけです』

社長は言った『わかった。やめてもええ!ただ勝ったと思うなよ!お前が去っていた後、お前を最後まで雇わなかった事を俺に後悔させた時がお前の勝ちや!』

こんなやりとりを最後に私は大好きな音の仕事場から一旦去る事になるわけである。
自分でやりたいと思った職に就けたのに自ら退いたわけである。
なんてもったいない!と思う話かもしれませんが
正直最後にスタジオから外に出たときの空気は死ぬほどうまいと感じました。
異常なまでの開放感。

そして次の再就職は何苦労なく、選り取り見取りであった事は言うまでもなかった。
実践こそ場数がなく、経験的に貧弱だったが、スタジオにしかない様な数千~数百万円するような高価な機材を操れる奴は滅多にいないわけである。むしろ貴重な存在でもてなされたものである。

で、新たな職場で働くと全てが楽に感じ、
全てに有り難たみを感じる人間に変わっている自分に気が付くのである。
先輩が挨拶してくれる~!感動  仕事教えてくれる~!感動
え~機材いじっても良いの~?感動 先輩と雑談できるんだ~感動!
毎日掃除しなくて良いの~?感動 笑
業界の仕事って楽し~!感動の連続

自分の中で当たり前と思う気持ちがなくなっていたんです。
はじめからあって当然という考えは、有り難みを知らない証拠なんです。
目の前にあるご飯やお仕事や現実が当たり前の事と思う時点で経験が足りない証拠なんです。
業界だから厳しい世界しかないかと思いきやそんなこと全くなかったわけですよ。
同じ業種でも世界は1つではない。

あれから時間が経ち私は独立して会社を興し自分で取った仕事を自分でこなし楽しくやっている。
音響専門の会社とは少し遠ざかってしまったが同じ業界で細々とやっている。
結婚もして子供も居る。人並みにとても幸せである。
人並みな生活がしたければ辞めた方が良いなんて大間違い。
意地悪な環境でやっていくためには自分が意地悪になるしかないって事。

恥ずかしいが今の仕事の半分以上が仕事の出来映えでなく人付き合いで仕事を得ていると自分で思っています。
あの悪夢のスタジオでは否定された事が今ではそれで飯を食っているわけである。

あれから10数年以上経った今でも
あのスタジオは未だに相変わらずMAエンジニア募集を掲げ続けている。
サイトを見ると知らない名前が1~2人増えているだけで後はメンツがまるっきり当時と同じ。
40才超えてもず~っとチーフになれずにアシスタントのままの方がまだ数名いらっしゃいました。。
きっと未だに独身で彼女もなく休日無意味にスタジオに来て音楽かけながら携帯いじっている方々の姿が目に浮かぶ。
向上心があって音が好きなら普通ならチーフエンジニアになろうと努力するなり
他のスタジオに移るなり独立するなりすると思うのだが、、、
何とも恥ずかしい、、40過ぎて卓の前に座れないとは。
自分よりも音に対する情熱のない人間にいびられていたかと思うと今でも少し腹が立ったりします。。


とはいえ、あんな職場にいたからこそ全ての事に感謝できる人間になれたことは事実である。
正しい事、間違っている事がわかるし、仕事は教えて貰って当たり前。
機材なんていつでもいじれて当たり前。壊れたら修理に出せばいいやって思わないですもん。
結局当時の苦い経験って今では良い経験になったりするんです。

ちなみに
私があの職場を去った後、残りの正社員になった同期の2人も数ヶ月後スグに辞めたそうな。
結局生存者ゼロ。社長は私を雇わなかったことを後悔していたそうな(後日談)

勝った。。。。


次回は『転職する時は未経験者は絶対経験者に勝てない』です 題は変わると思いますが。。
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さて連日のように会社に泊まり込み音響機材を勉強したわけですがスグに悪口や評判が広がる会社だったので私が連日会社に泊まり込みして頑張っている話も間もなく社内に広まった。しかし良い様に解釈はしてくれなかった、連日泊まり込んで毎日同じ服で朝は死にそうな顔で仕...
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コメント有難うございます

MDさん

ブログ読んでいただいて有難うございます。
目頭まで熱くしていただいて書いたかいがありました(笑)
偉そうに語っておりますが、普通にお仕事をこなす普通の人間でございます。
また何か面白いネタを思い出したら書きたいと思います。

フラフラとネット検索していたら
たどり着き読んでしまいました。
突然書き込んでしまい、申し訳ございません。
月並みな言葉に、なってしまいますが
感動しました。全くの赤の他人なのに
目頭さえも熱くなりました。
いまの、自分にダブらせてもしまいました。
ありがとうございました。

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